中本誠司へのメッセージ/No.5

ある美術家の思い出/詩人 原田勇男

昨年4月に亡くなった仙台の美術家を偲んで「中本誠司を仲間達展」が
仙台市青葉区東勝山の中本誠司個人美術館で開かれている。

故人と親交の会った29人の作家が新作を1点ずつ出品。
それぞれの個性が現代美術の有り様を問い掛けていて興味深い。

中本さんのパートナーだった大内光子さんに誘われて、古い友人の私も
誌作品「サンサーラの旅」(画・上野憲男氏)を出品した。

彼と知りあったのは30年近く前のことである。そのころ、彼は左官や建設作業員などの仕事で生計を支えた経験を生かし、住居兼個人美術館をほぼ独力で造り上げた。スペイン風の白い建設が新鮮だった。

最初に出会ったときの強烈な印象が忘れられない。初対面で一緒に酒を飲んだとき「原田さんは詩集を何冊出しているんですか」と聞かれた。三十代前半の私は、まだ詩集を持っていなかった。私より2才年下の彼は「ぼくは個展を16回開いています。画家は個展で勝負するが、詩人の場合は詩集でしょう。原田さんも詩集を出すべきです。」と言われた。
彼の言葉に触発されたのも事実で、36歳になって初めての詩集「北の旅」を自費出版した。誌や文章を書く以外、私は何の取りえもない人間だったからだ。
宮城県図書館の「宮城の詩人達」という催しでは、中本さんの絵に誌を付けて出品した。スペインの風土を思わせる作品で、原色が渦巻く情熱的な油絵だった。 二人で詩画展を開いたこともある。スペインをはじめ海外へ何度も旅をした中本さんとの交友は、なかなか刺激的でスリリングだった。

彼の口癖は
「HEART TO HEART」
心から心へ。エネルギッシュな彼は、どんな人とでもオープンに付き合った。

大胆な構図や原色をぶちまけたような熱い抽象画から、鉄板を組み合わせたオブジェ、鉄と木を組み合わせた半立体の作品など、彼は約千点の作品を残している。
「中本誠司と仲間達展」は6月3日まで。5月初旬には仙台市・定禅寺通の「メディアテーク」で中本誠司展が開かれる。現代美術の遺作をじっくり鑑賞しよう。一周忌を迎え彼の冥福を祈りたい。

原田勇男(詩人=仙台市)
〜河北新報平成13年4月24日「計数管」より〜
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